犬はそばにいてくれるだけで安心感を与えてくれる存在です。けれども年齢を重ねると、今まで当たり前にできていたことが少しずつ難しくなっていきます。散歩のペース、食事の工夫、そして足腰を守るための環境づくり…。ちょっとした配慮が、老犬の毎日をぐんと過ごしやすくしてくれるのです。今回は、大型犬がシニア期を迎えたときに気をつけたい暮らしのポイントをまとめました。
老犬期に気をつけたいこと(全体像)
年齢の目安
大型は6~7歳、一般的な大型は7~8歳から“シニア”の配慮を。
体重管理
太り過ぎは、関節に負担がかかることも。肋骨が軽く触れる・腰に軽いくびれが目安。
生活リズム
「短時間×複数回」の活動に切替。長時間1本勝負は疲労のもと。
認知機能のサイン
夜鳴き・徘徊・同じ場所で立ち尽くす・昼夜逆転。生活環境の見直し+獣医相談で改善余地あり。
環境温度
老犬は体温調節が苦手。夏は涼しい時間帯に散歩。冬は冷えすぎない室温と寝床に配慮。
足腰の力が弱くなる
若い時に比べるとスクッと起き上がることができず、よろけたり滑りがちになったりします。
我が家の大型犬は12歳で体重31kg。ソファや高めの段差もひょいひょい乗り降りする子でしたが、激しい動きは少なくなりました。
夏の暑さも影響はあったかもしれませんが、ゴロゴロ寝る時間が多かったです。
おやつやご飯の気配を察すると、急いで駆けつけてくれたりと食欲旺盛。
ポケットのハンカチをサッと持って行ったり、玩具を加えて激しく遊びだしたりと元気もありました。

散歩の注意点「距離より質」へ
老犬の散歩は「距離よりも質」を大切にし、無理をさせずに満足感を得られるようにするのがポイントです。特に大型犬は関節や心肺への負担が大きいため、ペース配分とオーバーサインの見極めがとても重要です。
- 短時間×複数回
1回を長く歩くよりも、15〜20分を2回、あるいは10分を3回と分ける方が疲労をためにくい。 - 「距離」より「満足度」
たくさん歩くことよりも、「匂いを嗅いで楽しむ」「景色を眺める」ことを重視。 - 帰り道を意識
行きの元気さにまかせて遠くまで歩くと、帰りがつらくなります。常に「戻れる体力を残す」感覚で。 - 週や日のコンディションで調整
前日の疲れが残っていたら距離を減らし、調子の良い日は少しだけプラス。“その日その子の体調”が基準。
散歩中のオーバーサイン(歩きすぎ・疲れすぎのサイン)
以下が見えたら「もう休ませて・切り上げて」の合図です。
- 歩くスピードが急に落ちる/止まりたがる
- 後ろ足がふらつく・よろける・踏み込みが弱い
- 舌が紫がかる、呼吸が荒く速い
- しっぽが下がりっぱなしになる
- 何度も振り返る・座り込む
- 翌日になっても強いこわばりやびっこが残る
今までは一回の散歩で20~40分歩いていましたが、10分位歩く散歩にした様子を見ています。
歩きたい気持ちは非常にあるので、日によっては帰るのを嫌がる(踏ん張って歩かない)こともあります。
尻尾は良く振るし、歩くペースも落ちたりはしないですが、帰宅後もしばらくは呼吸が激しいのでやはり一回の散歩時間は短めです。
食事の注意点(筋肉を守り、胃腸にやさしく)
- カロリー見直し
若い頃より1~2割減を目安に。ただしタンパク質は十分に(筋肉維持が最優先)。迷ったら獣医に量を相談。
いろんな商品が出ていますが、シニア用フードがバランスよく作られています。 - 小分け給餌
1日2~3回に分けて胃の負担を軽く。早食い防止ボウルやパズルフィーダーも便利。
ウェット化(ぬるま湯でふやかす)+適量の食物繊維で便通と腸内環境を整える。
ドックフードをぬるま湯でふやかすことで、消化しやすく、噛む力が落ちた子でも食べやすい。 - 脂肪・塩分・ご褒美
脂っこい/塩分高め/硬すぎるおやつは控えめに。歯が弱い子はやわらかいご褒美へ。 - サプリの考え方
オメガ3(EPA/DHA)や関節系成分(グルコサミン等)は体質と病歴で効果実感が違う。薬との相互作用もあるため導入は獣医と相談。
我が家も獣医さんに紹介してもらってサイエンスダイエットをずっと利用していました。年齢別・肥満体形に合わせて種類も選べるので、我が家の犬の状態に合わせて買っていました。
シニアになってからは、肥満犬用とシニア用を混ぜてあげていました。
足腰の弱り・滑り止め対策(家の工夫がいちばん効く)
- 床対策
フローリングは長いランナーラグやヨガマットを連結。曲がり角・出入口・水飲み場は必ず滑り止め。 - 爪&足裏ケア
爪が伸びるとグリップ低下。肉球の間の毛もカット。 - 補助アイテム
- 滑り止めソックス/靴:室内の立ち上がりが安定。
- 滑り止めシール:肉球に貼るタイプで、足全体を覆うことは無い。
- 補助ハーネス/ヒップサポーター:起立と階段の補助に。
- スロープ/ステップ:ベッド・ソファ・車へ。斜度はゆるく、表面はノンスリップ。
- 寝床
夏:通気性のあるメッシュマットや竹素材 → 体温がこもらない
冬:断熱マット+毛布 → 下からの冷えを遮断し、温めすぎには注意 - 自宅でできる“関節にやさしい”運動(各5回×1~2セット/日)
必ず滑らないマットか床の上で行います。- シット・トゥ・スタンド
「座る → 立つ → 座る」をゆっくり繰り返す運動で、いわば犬の「スクワット」にあたります。特に老犬の後ろ足の筋力維持や関節の柔軟性サポートにとても効果的です。 - ウエイトシフト
犬が立ったままの姿勢で、体重を前後・左右にゆっくり移動させる運動。滑らないマットの上などで立たせ、犬の肩やお尻をやさしく手で支えて、左右にゆっくり重心を移動させる。※「ほんの少しだけ傾ける」くらいでOK
おやつを鼻先から少し前に差し出す → 前足に体重がかかる。
次に胸の下や後ろに持っていく → 後ろ足に体重がかかる。 - クッキーストレッチ
犬が立った状態、または座った状態でおやつを犬の鼻先に近づけ、ゆっくりと以下の方向へ誘導します。
正面(前に伸ばす) → 首から背中の伸び
左右の肩方向 → 体側の柔軟性
腰の横(肋骨~腰の横) → 体幹のねじりと伸び
後ろの腰や尻尾のつけ根方向 → 体幹・首・背骨の大きな可動域
犬はおやつを追って体を曲げたり伸ばしたりするので、自然にストレッチになります。
- シット・トゥ・スタンド
我が家の犬はとにかく小さい頃からパワフルでした。
壁や運動靴をボロボロにしたり、おもちゃやタオルを持てば綱引き開始。自分の寝床のタオルやクッションも振り回して遊ぶことも。
一番すごかったのが3歳~8歳頃のボール遊びで、ボールを追いかけて植え込みにも突っ込んでいくほどでした。
そんなやんちゃ娘も10歳頃から階段の上り下り、車の乗り降りでよたつくことが多くなりました。
階段や車を使う事もめったに無いからといそこまで深刻には考えていませんでしたが、10歳の秋…突然の発作が起きて急いで病院にかかりました。
「まさかこのまま?」と皆が心配しましたが、この時は2日ほどで回復してくれました。たまに発作が起きることはありましたが、短い時間で落ち着いてくれていました。
原因を知る為にはちゃんとした検査が必要なのでしょうが、麻酔の負担にワンコの体が耐えられるのか?という心配もあり、できるだけの事はして住み慣れた家でゆっくり見守る方針にしました。
ワンコの為に一番いい方法を…と飼い主であればだれでも悩むことだと思います。治療を最優先でという考えもあれば、治療でワンコの体にかかる負担も考えて薬での対処(麻酔や手術なし)など。
我が家は今の子の前にも大型犬を飼っていましたが、その子は具合が悪くなった時に入院をさせ、そのまま面会できずに亡くなってしましました…。動物病院もたくさんの子を診ますし、大変な中治療をしてもらっているというのは分かっているつもりでしたが…。淡々と事務的に対応をされてとてもつらかった記憶があります。
住み慣れた家で最後を過ごさせてあげたかったという気持ちもありました。
早めに受診したいサイン
老犬の健康管理では「いつ受診すべきか」を見極めることがとても大切です。以下のようなサインが見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
🐾 早めに受診したいサイン(簡単に)
- 食欲の低下・急な体重減少
- 水を異常に飲む・おしっこの量が急に増える/減る
- 咳や呼吸の乱れ(ゼーゼー、苦しそう)
- 歩き方の変化(ふらつき、転びやすい、立ち上がれない)
- 下痢や嘔吐が続く
- しこりや腫れを発見した
- 元気がなく、寝てばかりいる
特に大型犬は老化が早く進むため、「年齢のせいかな?」と思っても病気が隠れていることもあります。気になる変化があれば、早めの受診が安心につながります。
まとめ(今日からできる3つ)
- 床の滑りを徹底的に減らす(マットを要所に)
- 散歩は短く・ゆっくり・嗅がせる(距離より満足度)
- 体重と筋肉を守る食事(カロリー控えめ+タンパク質は十分)
老犬の暮らしは「足場・ペース・食」を整えるだけで大きく変わります。無理をさせず、「今日は昨日よりラクそうだね」を毎日の合言葉に。
また、簡単にできるストレッチや筋トレも、ワンちゃんと遊びながらできるのでぜひチャレンジをしてみてください。
